株が安いか、高いか、その判断基準を教えよう(バフェット流計算式)。
今回の話はこれからの人生で大きく役立つ可能性が高い知識ではないかと思う。
タイムトラベラーになる方法(株編)
前回の続き
バフェットの投資法は
- コモディティ企業を避ける
- ROE15%前後の消費者独占型企業を見つける
- 割安なタイミングで買い付ける
というものなので、仮に割高で買ってしまっても「最初の銘柄選定」の段階で中長期的には負けづらい消費者独占企業を選択しているから、最終的には利益となりやすい、という特徴がある。
考え方としては、
- 最初に「大きく負けないように」株を絞る
という特徴があって、見つけたら
- 割安になるまで待つ
ということをする。それこそ5年でも10年でも待つのだ。
そもそもバフェットは長期保有前提なので最初に消費者独占企業を見つけて絞ったら、「期待収益率」を計算する。
将来の利益なのだが、この期待値が高いところで買うのだ。
暴落こそが重要であるワケ
株価が下落すればプレミア価格となる(期待収益率が高くなる)から、そこでバフェットは投資を実行する。
大体は悪材料が出た場合であったり、世界市場がパニックとなった時、多くの人が「買いたがらない局面」で買う。
なぜなら「割安かどうかのモノサシ」を持っているから「理屈(根拠)を持って」買う、ということができる。
しかし、これは普通は怖くてできない。
なぜ怖いのかと言えば、モノサシがないからだ。
しかし割安かどうかを判断するモノサシがあると暴落していれば、そこで将来の期待収益率も見えてくるので、バーゲンセールだから買う、という投資行動を躊躇だとか恐怖なく、できる、ということだ。
そもそも「最初」の時点で「消費者独占型企業」に絞っているわけで、圧倒的な馬力を持っているから、いずれは悪材料を克服して、割安で買った銘柄には、大きく利益が乗る可能性が高い。
大抵の場合、多くの人は「長期保有」ということができないのだが、
実はこの計算方法、考え方を知っていれば、心理的にも長期保有が可能になってくるのだ。
バフェット流の買い付け法
バフェットが重要視しているのが BPS を使ったやり方だ。
これはBook Value Per Shareのことで、1株あたりの純資産(株主資本)という意味で、ここから会社にとって純粋な資産はこれだけあるよー、ということがわかる。
最悪、何らかの事情で会社が解散することになってしまった場合は、ここから保有する株式数に応じて株主に還元されたりする。
なので、バフェット視点でのBPS計算法を知っておくと、それが「モノサシ」となるから知っておくといい、という話だ。
目線はミライ?
株価というのは、未来を織り込んだ状態で動く。
だから、株価を計算する場合も、「将来の株価を想定して、期待収益率を計算する」必要があるのだ。
そのために今後10年間の1株あたりの株主資本である「BPS」の計算が必要だということだ。
言葉にするとややこしく感じるかもしれないが、株主資本利益率(ROE)といって、自己資本(純資産)を使って、どれだけの利益が生み出すことができるのか、という部分にまず注目する。
ここから配当などを差し引いた値を「成長率」としてその企業の BPS、つまり「未来予測」として数値化するわけだ。
これを一目でわかるようにヤフー株価などではまとめられている。
このあたりをより詳しく知りたい、という場合は、
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を読むといいだろう。
実践編:バークシャー・ハサウェイを買う
せっかくなので、バフェットの会社であるバークシャー・ハサウェイを例に計算してみよう。
例えば、あなたが1986年時点で「まだ有名ではないバークシャー・ハサウェイ」という会社を見つけたとする。
「お、これは消費者独占型企業だな。けどいくらで買えば収益が出やすいかな」
と、考える。そこでどういう計算をするか?
チェックポイント1:
一株あたりの株主資本である BPS 値は1986年時点では2073ドルですが、わかりやすく2000ドルとする。
※これはバークシャー・ハサウェイの企業情報を見るとわかる。
1964年~1986年時点までのBPS の平均成長率は23.3%で、ここをわかりやすく、23%とする。
例えば、ここから14年後の2000年の BPS はどのような値が想定できるか?というと、
計算式は、
「2000ドル×(1.23の14乗)」
となる。
計算機で数字を入れるだけだ。
1.23の14乗を先に計算すると、答えは、
18.1414318
と出てくるので、18とする。
よって、
2000ドル×18=36000
となるので、この数字が1986年時点から見た14年後(2000年)に想定される BPS の値となる。
この計算ではBPS をそのまま2000年の株価と考えるので、1986年時点から見て、14年後にタイムスリップして、そこから現時点での株価は妥当かどうかを考える。
タイムトラベラーは可能か?
だから考え方、思考が常に
「現在」⇒「未来」⇒「現在」
という具合でタイムトラベラーのように移動していくのがバフェットの考え方の特徴だと言る。
ちなみに、株価は妥当かどうかの基準、収益率は年利で15%を基準として覚えておくといいだろう。
毎年15%の収益率だから、
- 14年後の想定株価のおおよそがわかる
- そこから15%ずつ差し引いて、現在の価格が妥当かどうかを見る
計算式としては14年後のバークシャーの株か
「36000ドル÷(1.15の14乗)」
となるから、1.15の14乗は
7.07570576
と出てくるので、ざっくり「7」とする。
36000ドル÷7=約5143ドル
となるので、2000年に BPS 推移から想定した株価である3600ドル(正確には、38911ドル)からの逆算。
逆を言うと、1986年のその時点でバークシャー・ハサウェイの株を5143ドルで買えたなら、2000年までの14年間で期待収益率は年間15%になる、という想定ができるということだ。
それで実際に1986年時点であなたがバークシャー株を買うとして、5143ドルをはじき出しましたと。
1986年の時点では、約2700ドルだったと。
そこで「モノサシ」を持ったあなたは、
「おいおい、5143ドルよりもはるかに安い2700ドルだと?」
という発見に至る、ということです。
もちろん1986年時点ではウォーレン・バフェットはほぼ無名だったし、バークシャー・ハサウェイも今ほどの知名度はなかった。
だから適切な価格の約半額なのだ、という見方もできるけれど、難しいことは考えず、「BPS」を元にして、将来の株価をタイムスリップして想定して、
そこから現在に戻って、逆算して、現在の妥当な株価を知る。
モノサシを手に入れた状態で、もし1986年に生きていたら、買いでOKだ!と判断できる。
当然、コモディティ企業ではなく、独占型企業という大前提があるから、それを忘れなければいいとなる。
結果、2000年後には、年平均収益率は、約20.1%で、
37000ドル(2000年の株価)÷2700ドル(1986年の
株価)=13.7倍
となる。
もちろん未来は誰にもわからないし、実際のバークシャー・ハサウェイ株価も1999年の時点では8万1000ドルまで達している。
だから1986年時点で2700ドルを割安だ、と判断して買い付けていた場合、13年後の1999年に2700ドルで買った株を8万1000ドルで売ったとすると、13年間の年平均は約30%(29.9%)となる。
想定収益率の15%を大きく超えた、ということになる。
これが「BPS計算」の威力でいくつかの条件でフィルターをかけていくと大きく乖離することが多々あるのだ。
※だからこれを発見したバフェットは偉大なのだ。
もちろんEPS を使った計算式もあるが、より複雑になってくるから、個人的には、BPS計算を知っておけばいいと思う。
BPSはどこで見つかる?
シンプルだからこそ、マスターすれば強いのだ。
データは財務データとして出てくるから調べればすぐに見つかるし、10年前などで出てこない場合は、
「企業名 Book value per share」
などで検索すればいいだろう。
証券会社によっては BPS と書かないで
「1株あたり純資産」
などと表記するから、合わせて覚えておくといい(意味は同じ)。
大事なことは、「モノサシ(割安か割高の判断基準)」を持つことだ。
そしてこういう知識を活用できる者だけが資産を増やしていくし、暴落を最大限活用できるのだ。
なぜバフェットが米中貿易戦争中であって、中国株を買うのか、を考えれば、一時的な悪材料での急落、暴落はバーゲンセールにしか見えないからだ。
計算した上で、それを根拠に実行する。
そしてこの計算力は、中学までの数学の知識で十分対応できるのだ。